小野寺 竜一 1994年度奨学生 『まことの道』

月日の経つのは早いもので、大学を卒業し、伝統芸能の能楽の笛方になるために上京して七年目に入りました。大学での植物分類の勉強から能の世界へと一見全く方向が違うように思われるかもしれませんが、私の中では、どちらも「花」を追求しようとする心は同じようなものなのです。 能の心とは、先人のことばを借りると「神に奉仕するの心」であり、その花とは、神に手向ける花のようなものであり、それを追求することは、その中に、つまり、己の中に神を見出すことに他ならないのではないでしょうか?私は元来、人の心は光り輝く宝珠のようなもので、月日を送るうちに、その上に埃がたまり曇らぬ様に、いつも輝いているように身魂を磨くことが大切であり、それには、正しい道を歩むこと、例えば、日々の生活を大切にし、仕事に励むことが必要であると思うのです。私は、好きなことを仕事にすることを望み、それを許してくれた周囲の方々、特に両親には常に感謝し、いつかその恩を何らかの形で周囲に還元しなくてはならないと思っています。
人はただ まことの道を歩みなば 祈らずとても 神やまもらん
現在・観世流囃子笛方

上田 美能里 1998年度奨学生 『四年目にして得たもの』

早くも大学生活四年目となり、卒業研究も佳境に入ってきました。この間、研究生活の開始や大学院入試などでめまぐるしく過ぎていきましたが、毎日今までにない充実感を感じます。 研究設備と研究内容を考慮して東京薬科大学への入学を決めたのですが、いま高次生体機能学研究室に所属し脳の研究を行いながら、正しい選択だった思います。私は中枢神経系シナプスにおけるグリア細胞の働きについての電気生理学的な観察を始めたところです。その中で、研究内容の面白さに加え、初めて本当の勉強をしていると実感する時があります。データから論理的に洞察することは、今まで机上で問題を解くのみだったのを実際のものとして行うことです。また、これまで関わりの薄かった電気や物理の分野を必要に迫られて学ぶようになってから、何を勉強すべきか分かって学ぶようになりました。 まだ研究というものの一端を垣間見たにすぎませんが、今の環境で与えられる数々の機会を逃さずに努力することで、学び取れることが多くあると確信しています。
現在・東京薬科大学 生命科学部

藤田 なつこ 1999年度奨学生 『将来の夢』

大学時代は、財団のご援助のお陰で、学業並びに部活動を始めとした様々な活動に心おきなく取り組むことができ、多くの経験を積む機会に恵まれました。 現在、結核の院内感染やSARS等の新型感染症が多発しています。医療従事者は、正しい知識を持ち、感染予防対策をとることができることが求められています。将来医療従事者になる学生も同様です。私は、臨床実習を行う学生に焦点を当て、実習学生の感染予防・管理について研究を行っています。将来は、院内のみならず、学内や企業内等様々な環境での感染予防・管理に関する研究を行いたいと思っています。 医療分野の研究は臨床において活用できることが大前提にあり、研究者にとって現場を知ることは重要な要素の一つです。大学院の2年間で研究方法の基礎を学びましたので、これから先しばらくの間は臨床現場で働き、どのような研究を行うべきかを考えていきたいと思います。 財団の皆様とお話しする機会があれば、是非参加したいと思っております。
現在・名古屋大学大学院 医学系研究科 修士課程

伊地知 伸行 1999年度奨学生 『近況報告』

貴財団のご支援のお陰で、研究や論文執筆に専念でき、この春、無事に博士号(理学)を取得することができました。 4月に協和発酵工業株式会社に入社し、5月に茨城県のつくば市にあるヘルスケア研究所に配属になり、現在はアミノ酸の機能評価の研究を中心に行なっています。イメージだけではなく、科学的に裏付けのある機能を探求し、世界の人々の健康に貢献することが目標です。ヘルスケア研究所の成果が商品化され、一日も早くみなさんの手元に届けられるように日々がんばっています。 将来的にはR&D(研究開発)とマーケティングを融合するような仕事に携わりたいと考えており、今はMBA(経営学修士)への派遣留学を目指して英語の勉強にも励んでいます。研究の分かるビジネスマンを目指してがんばります。 また、仕事や勉強ばかりでなく、趣味の時間も大切にするように心がけており、今年の夏休みは沖縄の慶良間諸島でスキューバダイビングや、シーカヤック、釣りなどを満喫しました。
現在・協和発酵工業株式会社勤務

藤野 好美 1999年度日本研究助成者 『新しい土地で新しい仕事を始めて』

今年の4月から、群馬松嶺福祉短期大学に勤務しております。 生まれ育った関西を離れ、初めて関東の地に住居を構え、新しい仕事と生活を始めて戸惑うことも多くありました。淋しさを感じる日もありましたが、ようやく最近になって仕事にも生活にも慣れてきた感じがします。 3月までは大学院で研究を続けながら、高齢者福祉の現場でケアマネージャーとして働いてきました。多くの高齢者やその家族の方々と接してきましたが、今度は若い学生が中心です。現場の空気や苦労を伝えるのは難しく、またこれからいろいろな経験をしていく学生たちの教育に携わるには、まだまだ未熟な自分を感じておりますが、現場で経験したことや学びを生かしてがんばっていきたいと思っています。そのためにも関東での人の繋がりを作れていないので、少しずつ繋がりを作っていこうと考えています。
現在・群馬松嶺福祉短期大学勤務

神永 真 2000年度奨学生 『ダイビングに魅せられて』

2年ほど前、友人の誘いでスキューバダイビングのライセンスを取りました。以来、陸上からは想像も出来ないような素晴らしい海の世界に魅了されてしまい、月2回のペースで潜っています。 海の中でいつも感じるのは、その美しさはもちろんのこと自然の偉大さです。静かで、水があるということを忘れるような透明度の海にいると、自分が海の一部になったように感じるときがあります。 しかし、そんな心地よい世界から、一瞬にして現実の世界に引き戻される瞬間があります。それは、ごみの不法投棄や河川からの土の流れ込みなど、環境破壊の爪あとを見たときです。 今私は電力会社に勤めていますが、当社は数ある企業の中で環境へ最も強い影響力をもつと企業と言えるでしょう。だからこそ、この会社でできる事が多くあるはずです。後世に便利な生活とこの美しい海を残せるよう、仕事に海に持てる力のすべてをぶつけていこうと思います。
現在・東京電力勤務

馬 冬黎 2000年度奨学生 『愛知県・豊田での社会人生活』

日本女子大学大学院を卒業し、愛知県にあるトヨタ紡織に来て、すでに2年半が過ぎました。東京と違い、電車が少なく、店も少ないせいか、ちょっと寂しく感じますが、社会人としての生活は学生の時と異なり、違う面白みが味わえます。 仕事は最初慣れなくて、色々な会議や会社規則に縛られ、能率が低いと悩み、それに日本の会社のやり方や考え方に慣れるまで大変で、何回も自分自身にどうして日本でこのように頑張らなくてはならないのと問い詰め、中国に帰りたいと思う時もありました。しかし、家族、友達から励まされたお陰で、様々な困難を乗り越えてきました。今は海外事業部で中国の合弁会社(上海、天津、寧波)3社のキャッチャーをやっており、自分の語学メリットを生かす以外に、事業プランの計画や経営状況の分析などにも参加し、とても遣り甲斐があると実感しています。 出張で時々中国へ帰りますが、一層に中国と日本の関係は緊密だと思い、日中友好に役立つことこそ、財団の奨学金の本来の意味であり、財団への恩返しになるのではと思っています。
現在・アラコ株式会社勤務

張 慶偉 2000年度奨学生 『近況のお知らせ』

私が味の素(株)の医薬研究所に入社してから、あっという間に半年が経ちました。 大学院の研究内容に引き続き、今も生活習慣病関係の分子メカニズムについて研究をしています。大学の研究方針は質を最優先にしているに対し、会社での研究は ”スピードx質”で評価しているため、最初は少し不慣れでした。今は理解が出来て、仕事の方はまだ少々スピードが追いつかないですが、専門知識が仕事に生かされていることで、とてもやり甲斐があると思っています。  最近はFM波による地震の予測に興味があって、それについて猛勉強しています(笑)。身近なことですから、気をつけた方が良いと思います。皆様も興味があったら行徳高校自然科学部のホームページをお勧めします。 なお、写真は今年の夏、妻がベニスで学会発表するため、私と息子がついていった時のものです。
現在・味の素 医療研究所勤務

辻本 麻友子 2001年度奨学生 『白衣姿が少しは様になってきました』

大学も後期に入りましたが、相変わらず、、というより以前にも増して忙しい日々を過ごしています。2年の前期までは講義・実習共に自然科学系の科目がほとんどだったのですが、後期に入ってからは病理学、薬理学、医薬品化学、生薬学などの専門科目が増えたので、薬学生としての自覚が強く感じられるようになりました。 私の大学は単科大学ですので1学年が約170名×2クラスしかなく、皆同じ授業を受けています。ですので、1年以上大学に通った今となっては、同学年の人たちの顔はなんとなくわかるようになりました。卒業する頃には学年皆顔見知りとなっているのか楽しみです。それに加え全員が国家試験を受けるという共通の目標があるため、他の総合大学の学生に比べると、妙な連帯感があるようにも感じます。ただ、授業を自分で選択して時間を割を自由に組み立てたり、単位の計算をしたり、様々な学部の人と知り合ってサークルに没頭したり・・・というような私の中の「大学生像」と今自分が置かれている状況とは随分違うのでそういった大学生活に憧れますが、私の大学生活も十分充実した日々を送っています。
現在・昭和薬科大学 2年生

鈴木 雄宇 2001年度奨学生 『ドイツでの研究生活』

現在多くの科学分野において、最先端科学技術研究・開発はアメリカを中心として行われています。しかしながらヨーロッパに措いても、アメリカまた日本に負けるまいと多くの研究機関が競いながら毎日研究を進めています。その中でも東欧と西欧の間に位置するドイツは、東欧からの優秀な人材が多く流入しその伝統的な科学に対する姿勢の基盤もあって活発に研究が行われています。私がここドイツで物理学の博士号候補生になってから2年目になりますが、その間たくさんの人たちにお会いしました。様々な国々から来た研究者がいて、なかには東欧の共産主義崩壊の時を生きてきた人たちもいます。彼らと肩を並べて研究・勉強できることをとても幸せに思いますし、今まで自分がどれだけ恵まれていたのかを実感させられます。 財団の援助を受けている奨学生の皆さん、私たちは財団を始めとしいろいろな方々のお陰で教育を受けられ、安全に生活でき、本当に恵まれていると思います。ぜひがんばってください。
現在・ドイツ・ケムニッツ工科大学

林 怡蓉 2001年度奨学生 『理想と実践の間』

周知の通り,台湾が民主化を遂げたのはここ十数年のことです。 民主化過程のなかで、コールイン(call-in)討論番組—一般視聴者が生放送討論番組に直接電話をし、自分たちの語り口でゲストに質問したり意見を表明したりすることのできる双方向討論番組—が数多く見られるようになりました。価値の多様化する現代社会に多元性を際立たせて、政治なるものの見直し、社会的観念の修正や再構成を可能にするコールイン討論番組は、しかしながら他方において、その社会的討論過程に社会全体をも巻き込むため、しばしば混沌とした様相さえ呈します。 ゆえに台湾でコールイン討論番組をめぐる社会的批判が起き、社会混乱の要因とまで指摘されています。 台湾の状況を見れば、民主制が掲げる文化的多様性・多元性=幸福という理想、及びそれに基づいて構成されたメディア制度があまりに一次元的すぎることは明らかであろう。 今年度、私は関西学院大学21世紀COEプログラム「『人類の幸福に資する社会調査』の研究」にリサーチアシスタント・非常勤講師を務めさせて頂く傍ら、民主制の理想と社会的実践の間に生じる溝を埋めるためには、どのようなマスメディア制度が必要でその要件とは何かという課題から、人類の幸福に貢献する研究に励みたいと思っています。
現在・関西学院大学21世紀COEプログラム・リサーチ・アシスタント 及び社会学部非常勤講師