小室 宏二 (1996年度大学奨学生)『日本一への転機』

「お前を大学に入れてやれる金が、ウチにはないんだ」申し訳なさそうに言う両親の言葉を聞いたとき、私の心の中で、小さな灯が点りました。高校時代、叶えられなかった「柔道日本一」という夢、これを諦めて他の道に進むことが、私には出来ませんでした。アルバイトをしながら学費を稼ぎ、5、6年掛かってでも卒業する。自力で進学し、そして果たせなかった日本一の柔道家になる!一般的にいえば、それが精神的な「自立」だったのかもしれません。「なりたい」ではなく「なるんだ!」そう思い行動することで、少しずつ何かが変わっていきました。幸いにも、入学間もなく、貴財団の恩恵を授かり、経済的にも安定し、充実した学生生活を送ることが出来ました。そして何より、果たせなかった日本一という夢を、2度も果たすことが出来たことは自分にとってかけがえのない宝物です。(’96全日本ジュニア優勝、’99全日本学生優勝)現在、私は(財)講道館(後楽園ラクーア隣)において、主に少年指導に携わっています。単に強い選手ではなく、挨拶が出来る、感謝が出来る人間を育てていこうと思っています。
現在/講道館道場指導部

千葉 由美(1997年度大学院奨学生)『摂食・嚥下の研究に従事して』

私は大学院大学の教員です。教員の仕事の特徴は、学生教育を行いながら、一方で自身の研究を遂行することにあります。現在、自身の研究の主テーマは、「食べること飲み込むこと(摂食・嚥下)の障害へのアプローチ」です。本障害によって起こる誤嚥(食べ物が誤って肺に入ること)は、死亡の直接原因となる肺炎罹患に深く関係しており、障害を有する方がより安全で質の高い生活を送るためには、専門職の思慮深さと慎重さをもった対応が重要となります。身近な問題である摂食・嚥下研究は、基礎医学の視点からも明確でないことが多く、新しい知見を意識しながら臨床にも携わるようにしています。自身は、数年前に日本人看護職として初めてDysphagia Research Societyという米国学会に発表しましたが、医師、歯科医師、言語聴覚士などの多職種が関わる領域であり学ぶべきことはつきません。これまで主任として複数の研究を率いる立場にも立っておりますが、医師、歯科医師などの先生方の協力を得ながら「摂食・嚥下友の会」を設立し、様々な活動を推進してきました。生きるサポートとなるべく研究、臨床、そして教育への還元に従事し、充実しています。
現在/国立大学法人東京医科歯科大学大学院 保健衛生学研究科
国立大学法人東京医科歯科大学「摂食・嚥下友の会」

大利 ファビオ 広明(1999年度大学奨学生)『真正直で、社会・自然に還元する究極の投資会社』を目指して

まず初めに、大学で思う存分勉強をする機会を与えてくださった伊藤謝恩育英財団に改めて、心からお礼を申し上げます。私が15歳の頃、両親の水槽会社の閉鎖の非常に辛い経験から、大学で「強く生き残れる経営学」を学びたいと思いました。最終的に逆転的な発想、つまり「失敗から学べる“倒産と再生の研究”」のゼミに入りました。大学卒業後、多くの金融機関で活躍している与信管理ソフト開発会社の研究部隊に入社しました。私の最終的な目標は、経営者になることですが、「今までにない真正直で、社会・自然に還元する究極の投資会社」を経営することです。しかし、昨今の「利益を一番に求める」投資会社ではありません。経済的に貧しかった私にとって、伊藤謝恩育英財団の活動は非常に感動的で、次世代に貢献せずにいられない状態になりました。「究極の慈善・投資会社」貢献し続けられる好サイクルを目指して、少ない貴重な時間を事業計画や企業分析に使って、楽しく過ごしております。
現在/株式会社 東京スター銀行

宮崎 里司(2000年度日本研究者)『日本語教育にかかわって』

大学4年時、「日本語教育」を将来の生業としたいと漠然と考えていた私は、ワーキングホリデー制度を利用し、英語を習得しながら、オーストラリアの日本語教育事情を学ぶため、シドニーに2ヶ月ほど滞在した。これが、この国と大きく関わることになろうとは夢想だにしなかった。88年から97年まで、メルボルンにあるモナシュ大学日本研究科で、講師として日本語教育に関わりながら、日本語応用言語学博士号を取得。現在は、早稲田大学日本語教育研究科において、第二言語習得や言語教育政策を専門に、大学院生の指導に当たっているが、伊藤謝恩育英財団の研究助成金をもとに、『外国人力士はなぜ日本語がうまいのか』(明治書院)を執筆したことが契機になり、「ことばを習得する」という意味を再考するようになった。その結果、墨田区・早稲田産学官連携プロジェクトにも加わり、区立中学夜間学級日本語教室を支援するようになった。今後も、さまざまな地域の日本語教育に関心を広げたいという意識を大切にしていきたい。
現在/早稲田大学大学院 日本語教育研究科教授 オーストラリア研究所所長

石崎 建士(2001年度大学奨学生)『エンジニアとして』

今年、大学院修士課程を卒業し、現在、株式会社東芝セミコンダクター社で研究開発の仕事をしています。学生時代は、貴財団のご支援により充実した生活を送ることができました。大学では、惑星探査に関する研究に従事し、9月に打ち上げられた月探査機「かぐや」のプロジェクトに携わる機会をいただきました。そこで、多くの優秀な研究者、技術者の方々と出会うことができ、その熱意、姿勢に触れ、大きな感銘を受けました。最後まであきらめずとことん打ち込む体力。高い専門性。研究の進め方。自身のこれからのエンジニアとして人生にとってとても大きな経験になっていると思います。半導体の分野は初めてですが、これまでの経験を基盤として、新しいことに果敢に挑戦する意欲をもって日々努力しています。東芝では、半導体に大きな投資を行っており、とても刺激的な環境にあり、自身の力を試すには絶好の場所です。まだまだ勉強することばかりですが、一人前の技術者として自信を持ち、常に困難なことに挑み続ける人材になることが目標です。将来は、自分の仕事がより豊かな社会の実現に大きく貢献できればと考えております。
現在/株式会社 東芝セミコンダクター社 プロセス技術推進センター

M.T(2001年度大学奨学生)『近況報告』

美しい都市の研究を志して入学した東京工業大学・大学院を今年3月卒業致しました。卒業式では社会理工学専攻総代を務め6年間通った母校に別れを告げました。大学院の研究では大型店進出によって衰退する都市と、一方で新たに創出される都市を対象にし、次第にこれらの動きを実体経済面から捉えることに興味を持ちました。そうした中で、わが国全体の経済活動を把握できる日本銀行の業務内容を知り就職するに至りました。現在は調査統計局において短観(全国企業短期経済観測調査)を担当し、調査先企業へヒアリングを行う他、短観統計の精度維持・向上にも参画しています。年4回公表される短観は調査開始から公表までの期間が約1ヶ月と短く企業活動の今を映す重要な情報財です。その業務に従事できる充実感を心に秘めつつ、日々研鑚を重ね微力ながら日本経済に貢献できる人材に成長していきたいと思います。なお写真(web掲載無し)は昨年学園祭でミスキャンパスを頂いた時のもので、応援に学生時代に出会った様々な友人が駆けつけてくれ本当に嬉しかったです。素敵な仲間と出会う学生生活を支えて下さった伊藤謝恩育英財団に大変感謝しております。
現在/日本銀行 調査統計局

馬場 菜津美(2003年度大学奨学生)『挑戦』

財団の皆様、奨学生の皆様並びにOB・OGの皆様、お元気でご活躍のことと思います。私は07年3月に大学を卒業し、現在愛知県豊橋市で、大学で勉強した分野とは全く別のフィールドで勤務しています。私が勤務する会社は、自動車部品を主力製品とするアルミニウムダイカスト事業を展開しており、入社後、3ヶ月の現場実習を終え、同工場の現場への配属希望を出しました。女性は工場勤務でも事務への配属がほとんどで、現場で働く人はあまりいません。これは私にとって大きく、長い挑戦になると思いましたが、この工場でどうしても実現させたいことを達成するために、あえて現場に飛び込んでみようと決心しました。全く知らない分野で、勉強の日々ですが、なぜかとても楽しく感じます。3ヶ月前には考えもしなかった職場で、「本当にこの道で良かったのか」と思うこともしばしばですが、それは誰しもが必ず考えることで、不安になったときは自信を持って自分を信じるようにしています。現役奨学生の皆さんも、進路を選択する際は、目先のことにとらわれ過ぎず、長い目で自分の道を見据えてみてください。応援しています。
現在/株式会社 アーレスティ 豊橋工場 金型課

山本 雄(2003年度大学奨学生)『夢を実現して』

私は財団の貴重なご支援をいただき、今年3月に大学を卒業して現在は教師として毎日充実した日々を送っています。教師という職業は私にとって中学時代からの夢でした。その憧れの職に就き、可能性や希望に満ち溢れたこどもたちに囲まれる毎日にやりがいを感じずにはいられません。もちろん、今世間で叫ばれているような、企業や教育現場においての問題は私の職場にも例外なく存在し、頭を悩ませたり、時には落ち込んだりすることも多々あります。でも真っ直ぐなこどもたちを見ていると、あの彼女たちのためになんとかしてあげたいとエネルギーが沸いてくる。そんな時、私はこの職を選んでよかったなと再認識できるのです。私は今まで財団をはじめ、多数の方々にご支援をいただきながら自分の夢を実現できることができました。それに感謝することと同時に、今度は私が今のこどもたちの夢をかなえる手伝いをする番だと考えています。こどもたちが秘める「自分の夢をかなえるんだ」という強い意志とそのためのチカラ。それらを引き出してやれるような教師を目指して、これからも熱く頑張っていきます。
現在/江戸川女子中学・高等学校 教諭