公益財団法人 伊藤謝恩育英財団 Ito Scholarship Foundation

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2019/12/19

理事長メッセージ ~25周年の節目を迎えて~

 2019年は当財団の創立25周年に当たります。人間で言えば、生まれた子供が一人前の大人になる期間、一世代を意味します。財団が成人し、世代の年輪を刻むことができたのは多くの方々のご支援の賜物であり、有難いことと思います。財団創立は私が古希(70歳)の歳でしたから、私は95歳になりました。長寿社会とはいえ、95歳という年齢を経験する人は多くはないでしょう。第二次世界大戦を体験した最後の世代でもある私が、今考えていることをお話しすることはそれなりに意味のあることだと思います。

 齢を重ねるにつれ感じることは、心配性だった自分が世の中や会社、家族や自分のことで心配することが減ってきたことです。人間は非力であり、自然の力、時代の流れには逆らえず、この世には人間の力の及ばないことが少なくないということが分かってきたからだと思います。

 その代わりに思いを強くしているのが、お世話になった方々のご親切のお陰で今日の自分、家族、会社があるという人の世の有難さであり、感謝の気持ちです。当財団が「謝恩」の二文字を冠しているのは、お世話になった方々へのご恩を思い、感謝の気持ちを忘れないという初心を表すためであり、財団の活動を通じて奨学生の皆さんが謝恩の気持ちを持った人材に育って欲しいという思いでした。

 私には、多くのお世話になった方々の中で、いくら感謝してもし足りない二人の大恩人がいます。実の父親以上に物心両面で面倒を見てくれた異父兄の伊藤譲、素人の私に商売のイロハを教えてくれた上、親身に悩み事の相談に乗ってくれた先輩商人の関口寛快さんです。幼くして父親に死なれた兄は自分が満足に学校に通えなかったのに、私の父である再婚相手の夫と別れた母親と私を引き取り、私を専門学校に進ませてくれました。兄は商売が軌道に乗って間もない頃、43歳で早逝します。関口さんも小学校を出て奉公に上がった苦労人で、番頭として仕えた地方百貨店で手腕を見込まれ、婿養子の格好で東海道一の繁盛店にしますが、社長の座を跡継ぎに譲って自分は身を引きます。

 二人に共通するのは、人生と商売に対する姿勢の真面目さ、誠実さ、真摯さです。それだけでなく、俺が俺がと自分の力を誇示して自己主張する人が多い中で、謙虚で自己犠牲を厭わないところは、凡人が真似ようにも真似られないところです。母と兄と私の3人が終戦直後の東京・北千住で2坪の店から始めた商売が、今日のセブン&アイグループに発展したのは多くの方々の支えあってのことですが、私の人生の師であり、商人の鑑である二人の大恩人の教えは、セブン&アイグループの経営理念のバックボーンとして、今も生き続けています。

 私は自分の人生を出来過ぎと思っています。世間からも成功者と見られている私が、そのような結果に導いてくれた方々の力添えに感謝するのは当たり前かも知れません。しかし、世の中には、成功を収めたのは自分の努力と才能によって得た当然の結果と考える人もいれば、世間的には成功と言えなくても、その人の人生に重要な意味を持った人に感謝の気持ちを持ち続ける人も少なくありません。

「お陰様」「有難い」ということが一番大事だということが分かる歳になり、助けてもらったら恩返しをしたくなるが、そう思った時、恩人はもういない、それが人生だということが分かるようになったということです。

 財団の年齢にも満たない皆さんに、老人の言うことはピンとこなくて当然です。皆さんは優れた先輩や同僚と交わり、知識や学問を吸収し、経験を積む中で自分の力を蓄える時期にあり、自己鍛錬に励んでもらいたいと思います。そして、いつの日か、皆さんが人生を振り返る時、私が言っていたことを思い出して、「お陰様で」と素直に言える人生を送ってもらいたい、それが私の願いです。

 来年、2020年はセブン&アイグループの前身のイトーヨーカ堂グループの、そのまた前身の羊華堂が創業して100年の節目に当たります。一人前の大人になった財団が会社の長寿にあやかって、末長く人造りの活動を続けて行けるよう、奨学生の皆さん、OB・OGの皆さん、そして影に日に財団の運営を支えて戴いている関係者の皆さんに、一層のご支援とご協力をお願いして、私の挨拶とします。

 

公益財団法人 伊藤謝恩育英財団 理事長 伊藤 雅俊

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